詩「継承」

継承

姉のようなひとたちは
とてもうつくしく流してゆく
うごかなくなったものたちを そおと そおと
波にのせて (どこにもたどりつかないように

ひだのよった表面は灰色を映し
水中で誘うように揺れる
わたしたちのスカートの間で
押し合い 囁き合い
悪あがきに
空を掻こうとする死に損なった死体ども (目と目をあわせないように

母のようなひとの半音
落ちた歌にあわせて姉の
ようなひとたちは
ひら ひら と笑いをつける (じょうず じょうず とてもじょうず
とうの昔に干からびてしまった
母のようなあのひとは
岩の上でいつまでも
母であることをやめない

あしたになればわたしもこの
手でかれらを流すのだという (千切れないように そおと そおと
わたしの流すべきものは どれか
かつてわたしがわたしたちになるまえに
わたしを沈めたものは
どれか どれか

うごかなくなった父たちを
とてもうつくしく流してゆくわたしたち (じょうず じょうず とてもじょうず
冷めゆくことのない柔らかな母の血に腰の上まで浸かり
はるか昔わたしたちの髪を撫でた男の手のひらの大きさを忘れながら
なんども なんども
わたしたちはうつくしく流してゆくだろう

(『ぷらとりあむ』より)

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